Diary(日記)

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2005年9月9日

サヘル
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ちょっとご無沙汰しておりますが
新しいご依頼の準備に追われている毎日です。
あちこちと出回っておりまーす。
まだまだ、暑い日もありますが秋を確実に感じながら
美味しい物がいっぱい出てくるのを心待ちにしているのです。(^^
今年は栗の時期を見逃さないで渋皮煮を作りたいあんでありまーす。


今日は、製作日記ではなく
ご依頼作品サヘル衣装の舞台、物語「FALLEN」(ファーレン)をご紹介したいと思います。
作品と重ねて楽しんで頂けると嬉しいなと思っております。
作者、MALINO様にご了承を得てその一部をUPさせていただくことになりました。
主人公 サヘルの素敵な画像をご紹介します。

下記のアドレスが作者様のHPです。
タイトル:デジャヴアートワークス
"http://www.dejavuartworks.com/"

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主人公 サヘル

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「FALLEN」(ファーレン)  vol.1


ある月の綺麗な夜
人気のない森の湖畔に、楽器を片手に持った一人の青年がいた。
名をパーシヴァルといい、地味な見習い作曲家だった。
この湖畔は夜が更けると辺りを静寂が支配し、湖面に映った月はとても綺麗で作曲にはもってこいの場所なのだ。
パーシヴァルはいつものように羊皮紙を取り出し、譜面作りにいそしもうと思った。

だが、この日はいつもと違った。
先客がいるようなのだ。

「水音・・・?こんな夜更けに一体誰が?この場所は僕しか知らないはずなのに」
生い茂る茂みを掻き分ければ目の前はもう湖。
パーシヴァルの鼓動は、誰かに聞こえてしまうのではないかというほど高鳴り、まるで金縛りにあったようにその場から動けなくなってしまった。
パーシヴァルはそこにいた先客にすっかり釘付けになってしまったのだ。
※透き通るような白い肌にゆるくウェーブのかかった長いブロンド。
熟れたサクランボのような唇・・・そのどれをとってもこの世のものとは思えないような美しさだった。

少女は一向にこちらに気づく様子はなく、白い肢体を晒し水浴びをしている。

絹のように細い黄金の髪、瞳は深い森の色。
透き通るように白く、程よく肉付きのよい女性らしいライン。
絵もいえぬ美しさに、パーシヴァルはしばらく時間がたつのも忘れ、すっかり見とれてしまっていたのだが、うっかり手に持っていた楽器を取り落としてしまった。

ガサガサとリュートが茂みに転がる。
その音に、こちらに気づいた少女がこちらへ歩み寄る。

その素肌には絹一枚纏われていない。

「お前・・・そこでなにをしている?」
少女が目の前まで来たところで、やっと我に返ると、改めて見る少女の肢体にハッとした。
慌てて顔を逸らす。
「す…すみません…別に覗いていたわけじゃ…」
自分でも分かるぐらい顔の温度が上がっている。
きっと傍目にも分かるぐらい真っ赤になっていることだろう。
その様子に、少女は不思議なものでも見るように小首をかしげた。

――この者は何故赤くなっているのだろう?体調でも悪いのではないか?
少女が2度3度小首をかしげていたところで、どう答えようかと考えあぐねていたパーシヴァルがやっと口を開いた。
「その…服を…きてくださぃ……」
いいながらクルリと背中を向けて小さくなる。
「おかしな奴だ。服など着て水に入れば、服が濡れてしまうであろう?」
「そ・・・それはそうだけど・・・」
まるで、お前のいう事がおかしいとばかりに少女は答える。
「それに、素肌のままのほうが気持ちよいぞ?何故人はこのようなものに身を包みたがるのだろな、まったく愚かしい事だ。」
「さぁ・・・でも・・・あなたも・・・その・・・人でしょう?」
そう言われて少女の目が驚いたように開き、己の体をしげしげと見下ろすと、なるほどといった様に微笑んだ。
「そうだな。しかしお前、何故こちらを見ようとしないのか?誰かと話をする時は素の者の目を見て話せと教わらなかったのか?」
「貴方がそのような格好をしていては、そちらを向く事ができません…」
「まったくお前は面白いな。よかろう、服を着ねば話ができぬというならば着てやろうではないか」
少女は名残惜しそうに湖面を見ていたが、木にかけてあった服を剥ぎ取った。

――僕の後ろで彼女が服を着ている。
背中を向けたままでも布擦りの音で否応にも想像が掻き立てられる。
パーシヴァルはこれでも健康な青年なのだ。
そうだ!無心になろう。無心になれば・・・そんな事をぶつぶつ言っていると、ふいにパーシヴァルの持っている楽器に細い指が重ねられた。
「これはお前のものか?」
驚いて振り返ると、服を着終わった少女が楽器に手を重ね、パーシヴァルを覗き込んでいる。
ドレスのせいだろうか?
先ほどよりも少し大人びた感じがする。
しばし見とれる事数秒……
「この楽器はお前のものかときている」
そこで再び我に返った。
「あ、はい。趣味で…誰もいないこの湖で作曲するのが僕の日課なんです。まだ誰にも聞かせた事がないけれど」
「そうか、それは邪魔をしてしまったな。いつもは水浴びなどせぬのだが…何故か今日は急に水浴びがしたくなったのだ。許せ。」
「いぇ、こちらこそ…あなたの…その…見て…しまって…」
「なに、見られて困る事などしてはいない…と、そうだ。
お前のその詩を私に聞かせてはくれぬか?」
「人に聴かせられるようなものではありませんが――貴方が望むなら。」
そう言うとパーシヴァルは楽器を手に取った。
心を込めて―――
腰を卸すと、朗々と歌い上げる。

美しく有るかな黄金の大地
富ましませゆたかなる草原
空仰ぎ見れば金色の月よ
抱きましませ母なる海
全てを包む優しき父よ
全てを慈しむ慈愛のひとよ

「お前が作った詩か、よい…詩だな。森の木々も喜んでいる。まるで光を奏でているようだ」
気がつけば月は傾きかけ、空が東から白いできていた。
歌の余韻に浸っていたパーシヴァルが、ややあって急に飛び起きた。
「し、しまった!うっかりしてた。このままじゃ仮眠を取る時間もないじゃないか。朝の礼拝に遅れてしまう!」
「お前、ちゃんと礼拝に出ているのか。ふむ。よい心がけだ。これ以上邪魔をしてはいかんな、そろそろ引き上げるとするか。」
わたわたと身支度を整えていたパーシヴァルが、はたと手を止めて振り返る。
「また、会えますか?」
「……」
「僕、いつも同じ時間にここに来ます。」
「……」
「貴方の為に詩を書かせてくれませんか?今度会うとき、その詩を聞いて欲しいんです」
「…わかった」
パーシヴァルの顔が明るくなった。
――あぁっ来週が待ち遠しい!
「それではまたこの場所で!…あ、そうだ、私の名前はパーシヴァル。貴方の名前を教えていただけませんか?」
「…サヘル…私の名前はサヘルだ。」
「サヘル…良い名だ…それではサヘル、また」
「あぁ・・・またな」
嬉しそうに踵を返す青年の後姿を見送りながらサヘルはポツリと呟いた。
「また……か…約束など他人と交わした事などこれまで無かったな。
それもヒトとなどと。」
パーシヴァルの姿が見えなくなって暫く経ったというのに、サヘルはまだ彼と交わした約束の事を考えていた。
しかし、あの心地よい楽の音がもう一度聞けるのならば、それもまたよいかと小さ
く微笑んだ。
「何が可笑しいのかしら」
急に後ろからかけられた声にサヘルの肩が硬くなる。
何時の間に現れたのか、サヘルによく似た面持ちの少女が木の上に腰掛けていた。
「下賤の者とあのような約束をして、お父様に怒られるわよ?」
それには振り返らずに答える。
「なに、戯れだ」
「戯れなどと…貴方…勝手に下へ降りたのも、お父様に知れればタダではすまないわ。
さ、帰りましょう」
「わかっている」
そう答えると、サヘルを中心に優しい光が広がった。
(背中から翼がゆっくりと広がる。)
その光景を人が見たならば、全てのものがこう答えるだろう。

美しい神の使い

天使――と。

       




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